おはなし夜市は、私と小学校低学年の娘との日常から生まれました。
晴れた日は公園や釣り、野菜の収穫体験など色々な所へ出かけますが、雨や寒暖の激しい日は遊びが家の中に限られます。
しかし、流行りのおもちゃを次々に買い足すことには抵抗がある。YouTubeやテレビゲームの時間は、放っておくと自然に増えていく——家での遊びの中で非デジタルで創造的な体験を子どもに届けたいという思いが常にありました。
我が家では、3歳ごろから、寝る前に絵本を読み聞かせる習慣が続いています。ある夜、私の幼馴染でショートショート作家の田丸雅智さんの文庫作品を、いつもの絵本の代わりに読んでみました。娘は物語を楽しみつつ、「絵がほしい」と言いました。
この話を田丸さんに伝えると、挿絵をつけた特別版を作ってみようということに。制作途中の、挿絵が入っていない試作品をリビングに置いていたところ、娘がその余白に絵を描きたがりました。予備を手渡し、私がページごとに物語を読み上げると、普段は20分ほどで遊びに飽きる娘が、そのときは2時間あまり夢中になって“自分の絵本”を描き上げました。表紙の作家名の横にある「絵」の欄に自分の名前を書き入れ、誇らしげに微笑んでいたのを覚えています。
ページには独創的な絵が並び、子どもの頭の中に広がる自由な世界に驚かされました。その時間は創造的で知的で、ワクワクに満ち、親子の対話も自然と深まりました。
ちょうど娘は学校で漢字を勉強し始めた時期だったので、私はあえてひらがなを多用せず、本文には漢字+ふりがなを採用しました。難しい漢字も残し、物語とともに繰り返し目にすることで、ニュアンスを感じ、自然に覚えられる設計にしています。
私は普段、伝統工芸を世界につなぐ会社を経営しています。子育て中のスタッフが多く、この「絵のない絵本」を試してもらったところ、親子で熱中できると大きな反響がありました。
そのとき、この体験は私たち家族だけのものではなく、もっと多くの親子にとって価値があると確信しました。
こうして「おはなし夜市」は、読む・描く・語るを通して子どもの想像力を育み、長いようで短い親子の時間を特別な宝物に変えるために生まれました。
まだ始まったばかりの取り組みではありますが、「おはなし夜市」の活用の場は少しずつ広がっています。
教育現場(幼稚園・保育園・小学校・学童)からは、読み聞かせに加えて「描く・語る」活動としての導入に関するご相談をいただいています。
ギフト用途では、大人が自ら描いた一冊を子どもや孫、親戚・友人のお子さまへ贈る事例が出てきています。
企業の子ども向けイベントに向けては、自社製品に関連した短編をプロの作家が書き下ろし、かき絵本(物語とすこしの挿絵だけがある、余白の多い絵本)として提供する企画も進行中です。
あわせて、複数のショートショート作家を起用した制作もスタートしています。
こんな「おはなし夜市」を通じて、多くの親子がより豊かな時間を共有し、お子様の創造力や感性が健やかに育つことを願っています。

代表取締役
房田基嗣
1987年、兵庫県生まれ、愛媛県育ち。
2020年に三井物産株式会社を退職後、「人々が心豊かに暮らす未来をつくる」をテーマにした事業活動を行う。
1児の父として、子供の可能性を伸ばす親子のコミュニケーションや子供の創造性に興味を持ち、創作絵本を軸とするプロジェクト「おはなし夜市」を2024年に始動。
本来、だれもが持っているはずの空想する力を、解き放ちたい。
私たちは、そんな想いのもとにこのプロジェクトをスタートさせました。
空想する、妄想する、想像する……表現はさまざまありますが、現実には存在しないものに思いをはせるという行為は、ネガティブな声にさらされがちです。
「そんなの変」「ありえない」「役に立たない」
そして、繰り返しそう言われるうちに、おのずと空想しなくなっていくものです。
たしかに、生きていくためには現実的なことをきちんと考えられる力も必要です。一方で、それだけに偏ってしまうと瞬間的・短期的な目先のことばかりにとらわれて、日常や未来がどんどん先細っていってしまいます。
空想することは、楽しいことだ。
私たちは第一に、そのことを広く伝えていきます。それと同時に、空想する力のさまざまな可能性についても伝えていきたいと考えています。
たとえば、空想する力があれば、物事を多様な視点から見つめられるようになります。相手をおもんばかれるようになったり、日常の中にあるありふれたつまらないものだと思いこんでいたものが、とたんに彩り豊かに輝きはじめたりもします。その力で未来を想えば、望んだ未来をみずから引き寄せられるようにもなり得ます。
そんな空想する力を、私たちは、活字や絵に親しみ、気軽に生みだすことを通じて育む提案をおこなっていきます。
みなさまには、この正解のない自由な世界で思う存分、感じたことを表現していただければ本望です。そして、みなさまの日常が、未来が、いっそう明るく豊かなものになっていくことを心から願っています。
プロジェクトメンバー

ショートショート作家
田丸雅智
1987年、愛媛県松山市に生まれる。
東京大学工学部卒、同大学院工学系研究科修了。
現代ショートショートの旗手として執筆活動に加え、 「坊っちゃん文学賞」などにおいて審査員長を務める。また、 全国各地でショートショートの書き方講座を開催するなど幅広く活動している。
書き方講座の内容は、2020年度から小学4年生の国語教科書(教育出版)に採用。2021年度からは中学1年生の国語教科書(教育出版)に小説作品が掲載。中学2年生の国語教科書(教育出版)の単元「連作ショートショートを書く」を監修。雙葉中学校入試問題や、 文部科学省が全国の約100万人の中学3年生全員を対象に実施した「2022年度 全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)」など、入試問題や模擬試験での採用も多数。
著書に『海色の壜』『おとぎカンパニー』など多数。絵本に『うちゅうえんそく』(福音館書店「こどものとも」)。メディア出演に「情熱大陸」など多数。

協力:アニメーション作家
高橋生也
1991年、千葉県市原市に生まれる。
東京藝術大学美術学部先端芸術表現科卒業。
明治大学、Jeep Japan、損保ジャパン日本興亜、タカラトミー、SoftBank、CHANELなどクライアントワークを広く手がけながら、アニメーション作品を制作し芸術祭やグループ展で発表している。
「星野リゾート×avex CREATORS WALL2020」avex賞受賞、 主な展示に「青参道アートフェア2019 H.P.FRANCE」@青山(招待作家)、「六甲ミーツアート2020」@神戸(招待作家)

